選挙を変えれば暮らしが変わる~3つの国の取り組みから~

先日、国際シンポジウム「選挙を変えれば暮らしが変わる」においてノルウェー、ニュージーランド、韓国の三名のパネリストから、政治における女性参画をどう推進してきたか、選挙制度を中心に示唆に富むお話を伺いました。

●トム・クナップスクーグさん(ノルウェー王国大使館参事)のお話より

〇ノルウェーでは女性の73%が働いており、1~5歳の90%が保育園に通っている(100%通えることが法律で担保)。よってそれを支えるため家庭と職場の双方で、男女が助け合う環境がある。育休に関しては、どちらが取得しても構わない期間のほか、母親、父親それぞれに割り当てられる期間(10週)もある。

〇クオータ制(女性を一定数割当てる)は法ではないが、40%率を取り入れている政党はもちろん、取り入れていない政党も、男女平等を実現できている。クオータ制がベストかはわからないが、比例代表制は女性を名簿にのせやすいというのはある。女性の参加は政治を変え、人々の可能性を広げてきた。現在、3つの連立政権の党首は全員女性。(ノルウェーの選挙制度の詳細についてはこちらをご参照ください。)

〇投票率は1945年以降、常に75%を超えている。投票期間や投票所など、投票しやすい環境がある。また解散がないので、投票時期が固定化している。

●テサ・バースティーグさん(駐日ニュージーランド大使館一等書記官)のお話より

〇再生可能エネルギーの割合が現在79%、2035年には100%が目標。これを決めた37歳の女性首相は6月に出産予定で6週間の育休をとる予定。その間は副首相が代行する。赤ちゃんを連れて議会に参加する女性議員や赤ちゃんを抱っこする議長の写真を紹介。授乳室の設置など、子連れ議員をサポートする環境がある。

〇国会のチェック機能の強化とバランスの観点から比例代表制を併用するようになった。選挙では政党が獲得した割合に応じて各選挙区でも比例の割合が決められる。(制度についてはこちらの映像が紹介された)クオータ制は法ではないが、比例名簿に女性が多く入っていることを国民が期待しているから、政党もそれに応える。名簿に載れば、選挙区で戦わずして当選できる。

〇ニュージーランドは世界ではじめに女性が参政権を得た国。現在国会議員の38%が女性だが50%を目指したい。クリティカル・マス(定着するかどうかの分岐点とされる普及率)を超えて、ノーマル(常識)として定着していく。

●キム・デ・イルさん(駐日本国大韓民国国大使館参事官、領事、選挙官を兼務)

〇儒教文化ということもありまずは制度からと、2000年にクオータ制を導入、公職選挙法と政治資金法を改正した。その後国政の比例名簿の奇数は女性とし違反した場合は登録無効、といったような罰則化により実現性が高まった

〇国政の小選挙区や地方選挙においても、候補者の30%を女性を義務化、首長に女性候補の強制化、あるいは比例代表の議席を増やすなどが検討されている。日本も制度改革にある程度の強制条項が必要ではないか。

〇クオータ制導入により、女性議員の数的・質的代表制はもちろん、議会の政治文化、政府の対応、女性団体の役割強化、投票行動などにも変化が起きた。さらに進めていくためには、女性自身が力を発揮し、50%を目標にしたい。

会場には、赤ちゃんを連れて議会に出席し問題提起された熊本の緒方市議の姿も。テサさんから「はじめに何かをする人は大変なもの。後に続く人のために信念をもって。時間はかかるけれど私たちも時間をかけてきて今がある。」といった力強い応援メッセージが寄せられました。

日本では長年待ち望まれた「政治分野における男女共同参画推進法」の成立を目前に、セクハラ問題とその政府の対応に非難が集中している状況。世界における男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は政治分野においては144カ国中123位(2017年/総合では114位)、国会における女性議員の割合は1割。
このような現状を変えていくためにも、推進法は大きな一歩となることが期待されます。さらに選挙制度そのものの見直しも必要ではないでしょうか。
選挙が変われば政治も変わり、そして暮らしも変わるはず。一歩一歩 ともに頑張りましょう!

4月20開催/全国フェミニスト議員連盟・選挙改革フォーラムによる共催(撮影:全国フェミニスト議員連盟)