インクルーシブ教育に向けた作業療法士の活用とは~アメリカの事例に学ぶ~
作業療法士、と聞いて皆さんはどんな仕事を思い浮かべますか。
私は母が手を骨折した時にリハビリでお世話になりました。しかしそれはほんの一面に過ぎません。
作業療法とは「⼈々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で⾏われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる⼈々にとって⽬的や価値を持つ⽣活⾏為を指す」とあります。(⽇本作業療法⼠協会 2018)
職業の英語名「OccupationalTherapist」の略称から、「OT」とも呼ばれます。
東京・生活者ネットワーク子ども部会では、インクルーシブ教育に向けた作業療法士(以下OT)の活用について、北里大学教授の高橋香代子さんを講師に迎え、オンライン学習会を開催しました。(7月15日)
教育の分野で、日本では特別支援学校にOTは配置されていますが、全ての学校ではなく、教員免許も求められます。公立学校から要請があれば、出向いて先生へ助言を行うこともありますが、子どもと直接関わることはないそうです。
一方、アメリカではIDEA( Individuals with Disabilities Education Act-個別障害者教育法)を受けて,各公⽴⼩学校にOTが配置され、誰でもいつでも必要な支援が受けられるようになっています。子ども達にとって身近な存在なので認知度が高く、「将来つきたい・つかせたい職業ランキング」では医者や弁護士より上位にあるといいます。
基本的にいわゆる「取り出し」はせず、クラスの中で特性を持つ子どもを近くの席に集めて、OTをつけます。クラスで一律に同じことをさせるのではなく、その子のできることにフォーカスをあて、主体性、自主性を伸ばします。決して個人だけみているだけではなく、生徒全体に働きかけ、全体互助を支援する(例えば多様性や合理的配慮などへの理解を深めるなど)という点が素晴らしいと感じました。個をみながら集団をみるのは、常勤でなければできないことです。
子どもはライフステージにおける一期間、だから点でなく線でとらえ、将来一人でも地域社会で自分らしく生きていく力を身につけさせる支援こそが必要です。その子の「できる」を支えて伸ばす、エンパワメントすることを目標に支援しています。
そのためには多様性が認められる地域社会という土壌が必要です。そして学校は地域の縮図のはず、だからこそインクルーシブ教育が大切なのです。
インクルーシブ教育については私も3月議会で質問したばかりですが、その必要性を再確認した次第です。分離ではない、同調圧力ではない教育は、全ての子どものエンパワメントにつながると感じました。
OTの視点を、子どもの育ちと学びに活かしていけるよう、広めていきたいと思います。