グリーンインフラと流域治水(滋賀県視察報告)
滋賀県では「流域治水推進条例」をもとにどのような取り組みが展開されているのか、昨今注目を集めているグリーンインフラの取り組みとともに学ぶため視察しました。(8月6日)
ご対応いただいたのは県の土木交通部の担当者です。
●グリーンインフラについて
滋賀県ではグリーンインフラを自然環境(滋賀の風土)が持つ多様な機能を積極的に活用し、環境と共生した社会資本整備や土地利用等を進める一石多鳥の取組と定義しています。
多様な機能とは「防災・減災」「地域振興」「環境保全」など、一石多鳥とは、様々な社会課題(気候変動に伴う災害リスクの増加、地域経済の停滞、コミュニティの維持、社会資本の老朽化、人口減少など)や地域課題を同時に解決していくということだといいます。
何か新しいことをするわけではなく、これまで滋賀県が取り組んできたことの新しい見方、言い方であり、グリーンインフラの視点で点検し、グリーンインフラの取組として位置付けていくとの見解を示されました。それには少し消極的な印象を受けましたが、これまでの積み重ねへの自負があるからこそ、言えることなのかと受け止めました。
具体的な事例はグリーンインフラ事例集をご覧ください。
「地域ぐるみ」あるいは「多様な主体による協働」といった見出しにあるように、市民とともに取り組んでいくことがまちづくりにもつながります。話にでた針生のカバタ(川端)は以前視察したことがありますが、水とともに暮らしている光景とそれを日常として守り抜こうとしている地域の努力が強く印象に残っています。
また「滋賀県生物環境アドバイザー制度」を設け、生物環境などの専門家の指導助言を受けながら公共施設の計画策定や工事を実施しているのは参考にしたいと思いました。
グリーンインフラは異分野の「コンビネーション・コーディネーションの技術」だと言われています。個々の事業がいかに有機的につながりあい、面としての効果を発揮していくか。日野市もまずは事例集をまとめるところから、日野の風土にあったまち全体のグリーンインフラはどうあるべきかを考える一歩として、すすめていければと思いました。
滋賀県では本年度中に取り組み方針を策定されるとのことですので、注目しています。
●流域治水について
滋賀県では大水害発生の経験から、2006年流域治水政策室を設置し、2014年全国ではじめて「滋賀県流域治水の推進に関する条例」を制定しました。前滋賀県知事(現在は参議院議員)で水や環境、農の研究者である嘉田由紀子さんが公約に掲げ、実現したものです。
以下、条例前文の抜粋です。
河川等の流水を流下させる能力を超える洪水にあっても県民の生命を守り、甚大な被害を回避するためには、「川の中」で水を安全に「ながす」基幹的対策に加え、「川の外」での対策、すなわち、雨水を「ためる」対策、被害を最小限に「とどめる」対策、水害に「そなえる」対策を組み合わせた「滋賀の流域治水」を実践することが重要である。
つまりどのような洪水であっても人命が失われることを避けるのが最優先、「流域治水」はそのための手段ということです。河川内部だけでなく、河川外部、つまり人が暮らす流域での備え(土地利用や建物の立て方、避難の仕方など)を一体として取り組んでいくことで、水害被害を最小化するのがねらいです。
滋賀県では条例に基づき「地先の安全度マップ」を作成しています。
河川からの氾濫だけでなく、生活圏の小川や水路等からの氾濫も検討しているのが特徴です。
危険な区域を順次指定し、土地利用規制や建築規制を行います。規制というと身構えてしまうかもしれませんが、将来にわたって安心して住める水害に強い地域とするため、県が責任を持ってチェック、あるいは支援する制度として理解をすすめているとのことでした。
日野市でも内水氾濫ハザードマップを策定中ですが、策定後どのように何に取り組んでいくかです。
流域治水とグリーンインフラは、一体となってすすめていくべきものです。川だけに押し込めるのではなく、まち全体で課題を整理し計画を建て理解を得ながらすすめていくことが必要だと感じます。
グリーンインフラは9月の一般質問つなげましたが、まだまだこれからです。一歩づつ皆さんと取り組んでいきたいと思います。