「セクハラ」のない社会へ~上野千鶴子さんのお話から~
先日、この「セクハラ」をテーマにした社会学者の上野千鶴子さんのお話を伺いました。
上野さんは「セクハラ」の歴史、構造、加害者の深層心理など、多角的かつ本質的なお話をくださいました。
「セクハラ」とは「セクシャル・ハラスメント」(性的いやがらせ)の略ですが、これは権力の乱用による人権侵害で不法行為です。告発しても被告に否定され、周囲から誹謗中傷を受ける等の二次被害、問題のすり替え、名乗り出ろという踏み絵・・・被害者が声を上げる際に失う代償があまりに大きすぎるのです。だからこそ勇気ある告発者を孤立させてはいけない、支え続けることが大切です。
自己中心的で加害の意識はなく、心理の深層にあるのは「所詮女(=男のための存在する)だ」という所有物としての意識。男性のアイデンティティの再確認。専門用語で「Doing Genger 」(ジェンダーの実践)というそうです。
男性は女性の庇護者である、という一種のパターナリズムを上野さんは「保護ゆすり屋」と称していました。しかしそんな保護はいらないしもう受忍はしない、女性達はそう声をあげ始めたのです。
ではこういった権力の乱用をどう抑制できるかー
権力の最も卑劣なのは暴力ですが、暴力を学習してきたのなら、非暴力も学習できるはず。そのカギは「ケア」であると上野さんはいいます。育児の過程で何とか暴力を振るわずに育て上げる「ケア」=「非暴力を学ぶ実践」であるならば、男性ももっとケアを担うべきではといったところでお話が締めくくられました。
実は開催地の狛江市では、市長による市女性職員へのセクハラが問題になったものの、市長はそれを否定、3月市議会では真相が究明されないまま、市長給与減額にて閉幕となったという現状があります。今回は「差別しない・されないまち」をつくろうという市民が企画した講座で「もうわたしたちはガマンしない。#Me tooから #We Tooへ そして #With You へ 足下の差別を考える」というタイトルでした。質疑応答で「この現状をどう突破したらよいのか」という市民の問いに「じれったいかもしれないけれど、今回これだけ話題になり市議会で取り上げられたのは前進。決して無にはならない。あとは市民が許すか許さないかだ。」とおっしゃっていました。
「当事者性」「足下から」「積み重ね」その視点を上野さんは大切にしていらっしゃいます。