子ども・若者が生きる喜びを感じられる社会に

10代~30代の死亡原因の第一位が自殺であり、とりわけ児童生徒の自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)が上昇しています。
日野市では平成28年から30年の3年間に66名の方が自殺で亡くなっています。うち39歳以下は22名、3分の1を占めます。

日野市が主催する講演会「子ども・若者自殺の現状の課題~いま私たちに何ができるか~」で、NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表、清水康之さんのお話を伺いました。(1月11日・七生公会堂)
清水さんはNHKで「クローズアップ現代」等を手掛けた報道ディレクターでしたが、自死遺児たちへの取材をきっかけに自殺対策の重要性を認識し、NPOを立ち上げた方です。「日野市自殺総合対策推進条例」(全国で2番目、都内では初)、「日野市自殺総合対策基本計画」の策定の際には、委員としてご尽力いただきました。

過剰適応が危ない。周囲の期待に応えるうち自己が空洞化する。」と清水さんは言います。周囲の評価に左右されない、自分軸が必要なのですが、日本は若者の自己評価が非常に低いのです。子どもの頃から、ありのままのあなたが大切だと受け入れられる体験、この積み重ねがいかに大切か改めて感じました。
子ども・若者の自殺は「炭鉱のカナリア」(※)であり、持続可能ではない社会への警鐘として取り組むべき喫緊の課題だと清水さんは指摘します。この警鐘をどう受け止めて、社会をどう変えていくか、私たち一人一人がどう生きるかにかかってきます。
それはいきいきと生きる後姿を、そしていざというときは助け合う姿を、日常的に子どもたちにみせていくことが大切なのではないか、清水さんは私たちに問いかけました。本当にその通りだと思います。
持続可能で、誰一人取り残さない社会の実現を目指すSDGs、その理念を長期計画の中心にすえていこうとしている日野市において、生きることを妨げる要因を減らし、生きることを後押しする希望を増やしていく、そのような施策を実現していきたいです。
※「炭鉱のカナリア」とは危険の前兆を示す言葉として使われます。その昔、炭鉱夫が有毒ガスの発生を察知するために、人間より敏感なカナリアを坑道に連れて入ったことに由来しています。

最後に、清水さんが中学校で行っている「SOSの出し方」の模擬授業もしてくださいました。まずは等身大の自分を語り生徒と関係を築いた上で、人間関係も、暮らす場所も、価値観も、今ここにあるものが全てではない、無限の広がりがあると同時に、どんな体験でも人生に無駄なことなどひとつもないということを伝えます。
そして悩んだときの具体的な解消法とともに、御守り型の相談窓口の連絡先、さらに何かあったら「私に」連絡してほしいと清水さんの連絡先を伝えます。「どこかの誰か」ではないこと、それが心の拠り所になるそうです。
中学生も食い入るように見るという、模擬事業で使うメッセージソング、ワカバ「あかり」はこちらからご覧いただけます。ぜひご視聴ください。(約5分)