労働者協同組合法案がいよいよ成立 その先に目指すべき社会とは

26日召集の臨時国会において「労働者協同組合法案」が成立する見通しとなっています。1990年代から、長い年月をかけてようやくこぎつけたものです。
一般的な企業が、営利を目的に、出資者である株主を重んじるのと異なり、協同労働の働き方は、組合員自らが出資し、事業方針を話し合って決め、働きます。雇われるのではなく、対等な立場で主体的に働く点が大きく異なります。
これまでもワーカーズという形で、営利を目的とせず、地域の課題解決のために活動してきた団体にとっては待ち望んでいたことです。法的に裏付けられることになり、ワーカーズという新しい働き方の認知が広まり、事業が拡大されることが期待されます。

10月18日「格差社会において協同組合は何が出来るか―救済から共催へ、そして社会的協働組合へ―」というシンポジウムに参加しました。これは「西暦2030年における協同組合」という本の出版記念イベントでもあり、多くの登壇者が活動紹介や課題を提起する、内容の濃いシンポジウムでした。

やまぼうしの伊藤理事長もサードセクターについてお話されました。

その中のお一人、堀利和さん(NPO法人共同連の代表、元参議院議員)は、冒頭に「障害」の概念について述べられました。(堀さんは視覚障害者です。)「障害」の概念は医療モデルから社会モデルに転換してきた、つまりその人に障害があるのではなく、社会とその人の間に障害があるから「障害者」になるという捉え方です。

また「社会」という言葉が一般化されすぎているが、あくまでそれは「資本主義社会」であり、市場経済前提の世の中では障害者は排除され続ける。社会が変容すれば、障害という概念も変わってくるとお話されました。

さらに「労働者協同組合法」は法制化できても、協同組合型の「社会的協同組合法」は日本の現状の法制下においては難しいと指摘します。大きな違いは雇用契約を結ぶか否かです。結ばないと「労働者」として扱われずに「無権利状態」に、労災も受けることができません。欧米ではボランティア事業も協同組合として位置付ける仕組みがあるようですが、どのような働き方にも社会的支援は必要です。

しかし「できる規定」を各労働関連法の条文に組み込むことができれば、それは可能となると堀さんはいいます。その前提には市場経済ではなく、社会連帯経済が求められます。社会や経済のあり方を変え、助け合いを地域社会へ広めていくために、協同組合が果たしうる役割は大きいというお話でした。

コロナ禍において、働きたくても働けない人、生活に困窮する人が増えています。非常時において、平時の格差は増幅されます。阪神淡路大震災を機に、ボランティア活動やNPOが広まりました。コロナ禍によって、私たちは様々な変容を余儀なくされている一方で、新しい働き方や生き方を見直すきっかけにできると考えます。

共に話し合い、考えていくことで、これまでとりこぼされてきた人たちが力を発揮できる。誰もが働き甲斐を感じながら働き、支え合う社会へと変えていく。
言葉や理念の上滑りではなく、法の後押しで新しい働き方が地域社会で必要な仕事として広がっていくことに期待を寄せながら、私も活動していきたいと思います。

手前が堀利和さん、後ろ右から練馬ネットのやない克子区議、共同連の柏井さん、練馬ネットのきみがき圭子区議、白井

★認定NPO法人やまぼうしの理事長 伊藤勲さんにお話を伺った際のこちらの記事もご参照ください。

★法について記載されている新聞記事をご紹介します。
労働者が出資、運営する「協働労働」法案成立へ(10月11日 東京新聞)
コロナ禍の新たな働き方「協働労働」2団体にその意義を聞いた(10月17日 東京新聞)