国は地方のボスなのか!?~これでいいのか地方自治法改正案~

現在開かれている国会で、地方自治法の改正案が審議されていることをご存じでしょうか。
その内容は、個別法の根拠がなくても、閣議決定だけで国が地方自治体へ必要な指示を出すことができる規定を盛り込むものです。(概要はこちら
あまりに曖昧な点が多く、国の都合のいいように使われることを懸念されます。
地方自治体から自治を奪う、非常に問題ある改正案であると考え、生活者ネットは断固反対を表明しています。ぜひこちらの声明をご一読ください。

審議入りした連休明けの5月7日、衆議院第二議員会館で開かれた集会では、東京・生活者ネットワークから岩永やす代都議も、平和・立憲・人権をつなぐ全国自治体議員会議を代表し、発言しました。この会議は、第二次安倍政権発足後、特定秘密保護法、集団的自衛権の閣議決定、安保法制の強行採決と続く中、民主主義を取り戻そうと自治体議員が市民とつながりあって運動を起こしてきたものです。岩永都議は、地方分権、地方自治、団体自治、そして市民自治を守るために声をあげていこうと力強く訴えました。
※集会の動画はこちらからご覧いただけます。

5月16日には同会館で開催された学習会に参加、また関西の議員と市民が中心となって集めた4000筆を超える反対署名を総務省に提出し、要請・質疑する場に同席させていただきました。(オンライン署名はこちら

総務省の担当者は「コロナ禍では個別法では対応できない想定外の事態があり、根拠法がないため自治体に対しお願いベースであった。個別法の改正はもちろんだが、その間においても国として責任を果たすことができるよう、法的な根拠が必要である。備えとしてこの改正は必要だ」という主張の一点張りです。こちら側の心配や疑問が、なかなか伝わらないもどかしさを感じました。同時に、気が付かないふりをしている、するしかないのかなとさえ感じました。

私は「地方自治体からは指示ではなくむしろ現場の状況に即した判断ができる権限こそ必要だという声があるが、見解を」と問いました。すると顔をあげて「分権は着実に進めてきているし、これからも進めていく」という旨の回答がありました。
そうであるならば、一度廃案にし、地方自治体から真に求められる制度こそつくるべきです。コロナ禍で困ったことは何だったか、そうならないようにするには何が必要だったか、地域を知る地方自治体が市民とともに検証し、その声を国がきく、ポスト・コロナは指示する側・される側から脱却した、新しい国と地方の関係を構築する契機にしなければなりません。

元我孫子市長、元消費者庁長官の福嶋浩彦さん(写真左)は、そもそも「分権」とは国が地方に権限を与えるものではなく、主権者である市民が国と地方に権限を分けて与えることだと言われていますが、その通りだと思います。
私たちはもっと主権者である自覚を持たなければなりませんし、地方自治体は指示待ち自治体になってはいけません。このままだと、本当に「茶色の朝」(★)を迎えてしまうのではないでしょうか。
そうならないためにも、この改正案の審議にぜひご注目いただき、一緒に考え取り組んでいきましょう。

★茶色の朝: フランスの心理学者、フランク・パヴロフによる「ごく普通の」国家が、日々の生活に知らぬ間に忍び込み、人々の行動や考え方をだんだんと支配するようになる寓話

5月7日の集会に駆けつけた生活者ネットのワークの仲間とともに

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総務省|地方制度調査会 (soumu.go.jp)
※今回の改正はこちらの第33次
地方制度調査会答申に基づきます

全国知事会からの提言

平和・立憲・人権をつなぐ全国自治体議員会議による反対意見

日本弁護士連合会:地方自治法改正案に反対する会長声明 (nichibenren.or.jp)