ここに住みたいと思える居住支援を(六甲ウィメンズハウス視察報告)
今年4月に「女性支援新法」が施行されました。それまでの売春防止法に基づく「保護・更生」から脱却し、女性の人権を尊重する「自立・支援」へと、女性福祉がようやくシフトしたのです。
困難を抱える女性が自立するために欠かせないひとつが、安心できる「住まい」です。
長年女性支援に取り組んでいる認定NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ悲願の女性のためのコレクティブハウス(★)「六甲ウィメンズハウス」が6月にオープンしたと知り、その経緯と実践を学びたいと視察しました。(8月6日)
★北欧で始まった多様な世帯が共同で生活をおくるライフスタイル
2010年、正井さんが視察で訪れたデンマークでみた女性と子どものための家。「こんな家をつくりたい!」と娘さんが描いてくれたイメージ図をもって方々に話をしているうちに、生活協同組合コープこうべが旧女子寮を使ってもいいといってくれたそうです。公益財団法人神戸学生青年センターとの共同事業として実現しました。
設立にあたっては国交省のモデル事業として3分の2の補助を受けたものの、運営に関しては一切予算がつかないという現実。しかも当初の予定より約1億円多い約2.8億円かかってしまっても増額はなく、残りは寄付等でまかなっています。新法ができたのに、と正井さんは肩を落とされつつも、神戸市長や兵庫県知事に財政支援を要望しているとのことでした。
次年度は予算がつくことを願うと同時に、私たちも声をあげていかねばと思いました。
一時避難所のシェルターも大切ですが、その先の自立に向け中長期的に安心して過ごせるステップハウス、住まいが必要です。1年では離婚するだけで終わってしまうそうで、引っ越し費用を貯める期間が必要という考えで、ここでは上限を3年と設定しています。もちろん入居にかかる初期費用や保証人も必要ありません。
ここに住まうことになった人は「孤独でなくなったのが一番うれしい」と語っていたそうです。仲間がいて、相談できるスタッフがいて、コミュニティがある。さらにコープこうべの協力を得て就労にもつながっている点が素晴らしいと思いました。
安心して、そして尊厳を持って暮らせる「住まいの確保」がいかに大切であるか。「ここしかない」ではなく「ここに住みたい」と思える住まいの提供は、次のステップに踏み出す女性のエンパワメントにつながります。「住まいは人権」であり、家があっても安心して住めなければ「ホームレス」だという言葉が印象に残りました。
さらに「相談と住まいはセットで」と正井さんは何度も繰り返していました。そして様々な困難を抱えた女性が「感情を言葉にできるスキルを伝えていく」と言われていたように、具体的な相談とともに、そのようなケアを通じて、ここに来た人は自分を取り戻していくのだと思います。
六甲ウィメンズハウスはNPOと民間企業が連携したジェンダー視点を持つ先駆的な事例ですが、多摩地域でも民間団体が活動しています。新法では「民間団体との協働」が柱のひとつにあるのですから、それをカタチにしていかなければ新法ができた意味がありません。
どのような協働が望ましいのか、新法の意義を共有し、日野市の関連計画に落とし込んでいくために、9月議会の一般質問にもつなげました。こちらをご参照ください。