武力で平和はつくれない(ダニー・ネフセタイさんお話会)

イスラエル軍元兵士ダニー・ネフセタイさんお話会に参加しました。いつか聴いてみたかったダニーさんのお話。加入している生活クラブ生協まち日野がお話会を開催すると聞き、楽しみにしていました。
複雑な歴史をわかりやすく、戦争に関する様々なデータを示しながら、自身の体験と時にはユーモアを交えてのお話に、想像を超えて深く感銘を受けました。(1月11日)

すべてのはじまりは「気づき」から

環境を変えると、見え方が変わり、そこに「気づき」が生まれます。ダニーさんは日本に来て、子どものころから敵だと思っていた国の人が、公園のキッチンカーで食べ物を売っている姿を見て、「同じ人間なのだ」と衝撃をもって気がついたといいます。
背景をとっぱらい、国を介さず市民レベルでつながれは、それは憎しみではなく平和につながります。敵などどこにもいないのです。

だからこそ私たちは日頃から、そして幼少期から、多様な人とともに育ちあう環境が大切なのだとダニーさん。多様性を包摂し認め合う環境、それが私たちが目指すべき「インクルーシブ社会」につながると思いました。
ダニーさんは、徴兵制によってイスラエル軍に入隊、空軍に所属し、憧れの戦闘機のパイロットを目指すことに誇りを感じていたといいます。前述の敵国の人もそうですが、無意識に価値観を刷り込まれる「教育」による影響の大きさ、怖さです。逆を言えば、教育が変われば、価値観も変わります。

ダニーさんは、週末は戦争反対のデモに参加していたそうです。「軍隊に所属しているのに矛盾しているよね」と笑うことは簡単です。しかし、まるで高校に行くように軍隊に入ることが当然の環境の下では、それは何も矛盾することではなかったというダニーさんの話は、そのような状況もあるのだと私にとって新たな「気づき」となりました。

「抑止力」論に対峙する

武力を論じるときに必ずでてくる「抑止力」。しかしそれが実際にそうなっているのか、核保有国も戦争しているのが実態ですから、つまり抑止力にはなっていないわけです。
学校に「自分の身を守る防衛のため」とナイフを持参したら大騒ぎです。しかしミサイルなど武器のスケールが大きくなると、それは必要だと何となく許容する空気になるのはなぜでしょう。武器は機能向上を求め続けるので、その価格も天井知らずです。喜ぶのはそれで儲かる一握りの人です。そこに血税をつぎ込むことは決して「国民を守る」ことにはならないどころか、近隣諸国に「あなたを信用していない」というメッセージを送り、緊張感を高め戦争を誘発するだけというダニーさんの見解に私も賛同します。

武器は武器。目的は人を殺し、ものを破壊することです。日本刀を芸術だという人もいるが、自分はそうは思えないとダニーさん。それは武器の「こちら側」にいるからだろうと語られました。以前市議会で、広報ひのの表紙に日本刀のイラストを使用しないでほしい、という市民の声を届け、庁内で様々な角度からの検証を求めたことがあります。私もダニーさんと同じ感性だと思いました。

戦争の影響は計り知れず

ダニーさんは、戦争の被害者についてこのような図で、その影響力の大きさを伝えました。

戦争によるPTSDの深刻さは、帰還兵のメンタルヘルスや自殺などでも語られています。
それはDVや性加害にもつながり、時間を超えて連鎖は続きます。ひとは被害者にも加害者にもなり得るというダニーさんの言葉は重いと感じました。
戦争は人間の本能だ、歴史がそれを証明している、など言われますが、果たしてそうでしょうか。ゆがめられた認識を、私たちはいつの間に刷り込まれているのではないでしょうか。大切なのは「これからどうするか、どうしたいか」だとダニーさんは強く訴えました。

平和の伝え方

平和を語るときに、「平和を望まない人はいないですよ」と私もよく言われます。ならば平和こそが人間の本能なのだと考えるのが自然です。先の「抑止論」にもつながりますが、そのためにとるべき選択で意見が分かれるのです。
意見や考え方の異なる人と対話を深めるのは簡単なことではありません。ダニーさんは「ゆっくり伝えること」が大切だといいます。なぜ自分はそう考えるのかを掘り下げ、相手にも掘り下げてもらうこと、より大きな共通項をみつけながら、共感を広めていくことだと受け止めました。

その共通項となるのが、待ったなしのテーマ「地球温暖化を食い止めること」です。戦争が環境にどれほどのダメージを与えるかを考えれば、一切戦争はしない、している場合ではないことを、ダニーさんは「ドクターストップをかける」と表現され、ぴったりだと感じました。これを世界共通の理解と約束にしていくことです。

歴史を学ぶのではなく、次の戦争をしないよう歴史に学ぶこと、平和も環境も、未来は私たち一人ひとりの選択と行動にかかっています。最後に主催者から、リユースできるビン商品ひとつ選ぶ小さなことも、それにつながるのではと話がありました。身近なことから、できることからはじめることが大切です。

さらに臆せず自信をもって「戦争は止める、戦争はしない!」と声をあげうねりにしていきたいと強く思いました。ダニーさん、ありがとう!