遠い支援から身近な支援へ(女性支援法シンポジウム)
4月19日、立川市女性総合センターアイムにて開催された「女性支援法施行から1年~支援現場&自治体は変わったか?」シンポジウムに参加しました。主催は支援団体や自治体議員等による「多摩で女性支援法を活かす会」です。
女性支援法について基調講演、都内自治体の調査結果報告、現場の具体事例の寸劇、そして関係者によるパネルディスカッションという4部構成の充実の内容で、会場のホールは満席、中継会場も設けられました。以下ほんの一端ではありますが、報告します。(順不同)(シンポジウム写真:多摩で女性支援法を活かす会提供)
●庁内・民間との連携強化で当事者真ん中の支援を(基調講演より)
基調講演では、女性支援法の第一人者である戒能民江さん(お茶の水大学名誉教授)より、法の概要と意義、そして自治体に求められることなどについて、お話がありました。
法律も行政も縦割り。だから支援も縦割りで、支援者が走り回ってつないでいるのが現状です。その連携の仕組みをつくっていくのが、法の大きな目的のひとつです。
女性支援法は女性福祉の一歩、その根底にあるのは当事者真ん中の支援、自己決定を支える人権の保障です。女性が安心して自立して生活できる社会の実現のためには、息の長い支援を地域で展開していくことだと戒能さんは強調されました。
●こうだったらいいのにな(寸劇より)
「女性支援あるある」として、パートナーからの暴力に耐えかねて子どもを連れて逃げてきた女性や、父親からの性虐待に苦しむ大学生など実際にあった事例を、悪い対応例、よい対応例と両方を表現することで課題を浮き彫りにする、工夫に満ちた力作に大きな拍手を送りました。
悪い対応例は、適切な部署につながない、既存のルールに当てはめるだけで相談者に寄り添っていない、わからないし決められないから相談しているのに二択を迫るだけ、場しのぎの支援のみでフォローはない などです。
知識や経験、情報不足や人員不足もあるかと思いますが、相談者を対等なひとりの人間としてみていないという、根本的な問題があるように感じました。
一方でよい対応例は、まず相談者を安心させる、迷うのは当然として自己決定を支援しエンパワメントする、豊富な知識と情報で相談者にとって一番良い選択につなぐ、息の長い支援 などでした。
そこにあるのは「今からでも遅くないですよ」「一緒に考えましょう」と相談者と共にある姿勢です。このような寸劇仕立てで、ロールプレイをする職員研修も有効なのではと思います。
●都内自治体の調査結果報告とパネルディスカッションより
都内26市・23区を対象とした「困難な問題を抱える女性への支援に関する調査」について、それぞれ調査を行った議員より報告がありました。調査分析から以下のような課題があげられました。共通する部分も多いのでまとめます。
●女性相談支援員に関する質問について回答に非公開が多いのは、DV被害者支援と考えられているのではないか、女性支援法がまだよく理解されていないようなので研修は必須
●女性相談支援員の配置基準もないため、支援員一人あたりの女性人口も自治体により大きくバラツキがある。
●婦人相談支援員から女性相談支援員に名称が変わっただけで、内包された雇用形態や処遇などの問題はそのまま引き継がれている。
●庁内連携を強化するための女性相談支援員の配置部署の見直しは少し進んでいるようだが、組織改編には至っていない。
●新法に基づいた個別の基本計画を策定しているのはごく一部の自治体だが、それにより予算のつけ方が変わることもあり、民間団体への財政措置の観点からも早期策定が望まれる。
最後は戒能さんが進行をつとめ、国立市の担当者、民間支援団体の責任者、女性自立支援施設の施設長、女性相談支援員によるパネルディスカッションでした。
女性支援法の大きなキーワードである連携とは、結局「目の前にいる相談者、その人にとって必要な支援のために編み出されるもの」であるということが共通項として印象に残りました。
それがチームで対応する豊かな支援につながります。そのためにも寸劇にあったような現場や調査結果から見えてきた課題を、ひとつづつクリアしていかねばなりません。
国立の担当者からは、近隣自治体と意見交換の場を設けている話もありましたが、これもまた連携の一つとして、ぜひ継続し地域内外でネットワークを強化してほしいものです。
日野市では現在第5次男女平等行動計画を策定中で、女性支援法に基づく基本計画はその中に盛り込まれる予定です。必要としながらも相談にすらつながっていない人に支援を届ける、女性支援法を使えるものにしていくための環境と関係をどうつくっていったらよいのか、上記の課題を踏まえながら、しっかりとチェックをしていきます。