国内(家)人権機関の設置を!(女性の権利デーシンポジウム2025)
今年は戦後80年、女性参政権から80年、女性差別撤廃条約批准から40年といった節目の年です。
7月25日は、日本で女性差別撤廃条約が発効した日です。4年前に関係3団体がこの日を「女性の権利デー」と宣言し、シンポジウムを開催しています。今年のテーマは「やっぱり必要!独立した国内人権機関」でした。(於文京シビックセンター)
求められる国家人権機関とは
まず、「国家人権機関」をテーマに研究されている馬橋憲男さん(フェリス女学院大学名誉教授)よりオンラインでお話がありました。改めて人権とは、属性を問わず、すべての人が平等に保障されるものです。
日本には政府から独立した国際基準の人権機関がありません。「政府からの独立」というのが最大の特徴で、その理由は政府が過ちを犯すこともあるという歴史からの反省と、政府が自らの政府を中立公正に評価するのは難しいからです。その独立性はGANHRIが厳正に審査しているということを知りました。
National Human Rights Institutionは一般的に「国内人権機関」と訳されていますが、馬橋さんは「国家人権機関」のほうが権威あるとし、そう広めたいそうです。(ですのでこの章ではそう書きます)オンブズマン、コミッショナー、委員会等の総称で、事実上、人権の国の最高機関となります。
国の人権状況のモニターや個人の訴えの調査、条約審査への貢献やフォローなど幅広い活動があります。また人権条約の国連審査において、国家人権機関が全審査過程へ参加することが推奨されています。それはどういうことかと言えば、このようなイメージです。
●準備:調整役として、政府に国民的対話を呼びかけたり、政府による報告書を独自に評価し、勧告案を国連審査に提出など
●国連審査:審査に参加し、審査委員の質問に答えたり、追加情報を提供など
●審査後:国会に審議を働きかけたり、国連勧告の実施状況を条約の規定に基づき評価し、その評価を国民へ周知、国連へ報告など
なるほど、実効力が高まるのがわかります。
例えば日本の現状をみると、司法で同性婚が違憲とされても、国連から勧告がきても、いまだ実現されていないですよね。先の参院選でも、選挙を利用した差別発言が野放し状態でした。
これまで国連から国家人権機関の設置を25回も勧告されているにも関わらず、設置していません。国家人権機関は国(政府)と国連、政府とNGOの懸け橋になります。この懸け橋がないという現状がよく理解できました。
絶対必要!CEDAW審議における国内人権機関
続いて女性差別撤廃委員会委員の秋月弘子さんからは、委員の立場から、その必要性を語られました。なぜ司法だけではダメなのか。いま様々な分野で外部評価は当たり前になっていますが、司法にはそれがありません。その単純な事実に目から鱗の思いでした。
司法におけるジェンダーギャップは大きく、事案がジェンダーレンズでみられていない、人権内容の変化に対応した研修がない、それでは迅速な救済につながりません。だからこそ、外部評価としての独立した国内人権機関が必要なのです。
CEDAW(女性差別撤廃条約)審査において、日本からのCSO(Civil Society Organization 市民社会組織)報告書の数の多さは突出しています。国内では聞いてもらえない!とジュネーブまで100名を超える活動家が声を届けに駆けつけたと聞いています。
これでは委員は書類に目を通すのも声を聴くのも大変ですし、優先順位がわかりません。国内人権機関がともにあれば、現地の最新の状況やその過程を中立な立場から委員に情報提供し、アドバイスすることでそれが勧告案にも反映されます。
日本では政府とCSOが対立や緊張関係にあり、そこをつなぐ国内人権機関がありません。
またカナダは国の代表団の中にNGO等のメンバーが入っている、つまり政府と対等な立場で共に審査に臨んでいるというのですから、大きな違いを感じました。
審査後のフォローも、建設的対話ができている国では委員が呼ばれ打ち合わせをしているようですが、秋月さんは政府から呼ばれたことはないそうですから、驚きです。女性差別を本気で撤廃しようという気がない、としか受け止めざるを得ません。
日本にはないからイメージがつきにくかったのですが、国内(国家)人権機関の必要性、すごく腑に落ちて理解できました。これがないから、いくら条約に批准しても日本では差別解消が進まず、事後対応で早期救済につながらないのですね。
ここから変えていくために、ともに声をあげていきましょう!