東京を女性が暮らしやすいまちに~都へのヒアリング報告

東京・生活者ネットワーク「女性が暮らしやすいまち~女性の安全安心自治体調査~」について、ジェンダープロジェクトのメンバーとともに、報告と東京都への聞き取りを行いました。(1月27日/総務局、生活文化局、福祉保健局より各担当課)

調査の3つのテーマを軸に、なおこ目線でお伝えします。

 

●セクハラについて

都内自治体への調査では、セクハラ防止指針があっても、公開しているのはそのうちの約3割のみでした。東京都においては、基本方針や要綱は任命権者(局長)ごとに作成しており、庁内LANで共有しているものの、公開はしていないとのこと。職員が良い仕事をすることが、結果的に都民のためになるという考えで、公開の必要性を感じていないようでした。

しかし、都の取り組みは各自治体も参考にしているはずです。求められれば開示するというのではなく、先駆的な事例として、また内向きの職員用ではなく、外向けにも啓発の意識を持って、公開することを求めました。

毎年、セクハラに関する理解度チェックリストを配布している取り組みはよいと思いました。内容も時勢に合ったものを毎年更新しているとのこと。例えば今でしたら、テレワークやweb会議における注意点なども盛り込まれているとのことです。

また私たちは、首長等特別職にも研修をすべきだと考えています。少数ですが、実施している自治体もあります。都では任命権者への直接的な研修はないとのことですが、「当然理解しているはずだ」という認識ではなく、「当然やるべきだ」というスタンスで、取り組んでほしいと考えます。

 

●DVについて

コロナ禍で相談も急増しています。都に民間支援団体へのバックアップに対する見解を求めると、民間シェルターへはセーフティネット強化事業で先進的な取り組みを行っているところを支援していきたいとのこと。「先進的な取り組み」とは何かを尋ねると、国が示している事業は「受け入れ体制整備」「専門性(弁護士など)」「切れ目のない支援プログラム」の3つであるとのことでした。

しかし、それらは民間団体がボランティアで行ってきたことでもあります。資金が十分でないため、経営難や人材不足からシェルターを閉鎖したところもありました。ですから先進的な取り組みだけ支援するとの説明には、違和感を感じてしまいました。

また、シェルターとなる公的な母子生活支援施設、婦人保護施設については、ルール等において使いづらいという声があります。満室でないからニーズがない、よって増設の必要性はないとの見解でしたが、利用者目線の運用の見直しを求めます。

そして、DVをなくしていくためには、教育が重要です。しかし、中学校へのデートDV講座の働きかけは、義務教育段階ということもあり各学校の判断に委ねているとのこと。子どもたちを守るという視点で、デートDVのみならず、性教育全般の必要性を認識し、教育委員会との連携を進めることを求めます。

 

●性暴力について

都は、研修の実施状況など毎年調査を行っていることから、ある程度自治体の状況を把握しており、自治体によって支援に差があることも捉えていました。現在、支援計画を立てているところなので、そこにはノウハウの蓄積がない自治体でも相談に対応できるよう、研修体制の強化などを盛り込んでいきたいとのことでした。

現在都内に1ケ所のみのワンストップの性暴力救済センターの増設については、センターを増やすというより、センターと医療機関の連携等を深めていきたいとのこと。私たちは、多摩地域にもセンター設置を求めています。被害者の速やかな救済とともに、そこが多摩地域の性暴力支援の拠点にもなると考えるからです。(東京のセンターはこちら

同時に、大切なのは連絡先の徹底した周知です。都では全ての自治体にリーフレットを送っているので、置いていないところはないはずとのことでしたが、私たちの調査では、周知をしていない・回答なしが8自治体ありました。担当者の意識と、都のフォローアップの必要性を感じました。

 

●ヒアリングを終えて

私たちの調査では現行制度でできること・やらなければいけない事に絞った設問事項にしたにもかかわらず、全体として点数が低い結果となりました。(1位の日野市で54点、平均点34点)

都へのヒアリングで、各自治体の具体的な状況をこの調査で初めて知ることができた、というコメントがありました。都はもっと自治体の実態を把握しておくべきではないかと思うと同時に、この調査の意義を大いに感じました。

予算も影響力もある都にはイニシアティブを発揮し、率先してこれらの施策に取り組むと同時に、各自治体の底上げ、バックアップを求めます。
今後も機会をとらえ、対話と発信を続けていきます。

右より伊藤ひとみ(江戸川ネット)、田中みちこ(世田谷ネット)、山内れい子(都議)、岩永やす代(国分寺ネット)、じつかわ圭子(東大和ネット)、白井なおこ