幸せになるために、周囲に頼る知恵を~反貧困学習から学ぶ~

大変な状況の渦中にある人は、自分の置かれた状況を客観的に見ることが困難です。特に子どもの場合、自分が育った環境以外を知る機会もなく、「そういうものだ」と思いがちです。ゆえに誰かに「相談しよう」という知恵もないのではないでしょうか。だからこそ、周囲の大人が気付くこと、とりわけ教師の存在は、ときにその子の人生を大きく変えます。

先日、大阪府立西成高校の「反貧困学習」をテーマにした番組を観ました。そこはいわゆる「荒れた」学校でした。しかし教師が家庭訪問を重ねるうちに、不登校や遅刻、反抗的な生徒の背景には、家庭の貧困育児放棄などがあることがわかりました。そこで考え出されたのが、貧困から抜け出すため、生きていく術を身に着けるための授業「反貧困学習」です。

何が「貧困」がわからなければ、そこから抜け出せません。そして福祉制度は基本的に申請主義、知らないとつながりません。そこで困った時に味方となる法律、制度や相談先について、生徒自身に調べさせます。教師と一緒に生徒たちが熱心にスマホで検索する姿を見て、「学び」と「生活」そして「生き方」がリンクしていると感じました。
これぞ生徒たちの未来を見据えた、貧困の連鎖を断つ実践教育ですね。

特に力をいれているのが、シングルマザー女性の人権だといいます。全国には母子世帯が123万世帯、その半数以上が貧困状態です。生徒の中にもシングルマザーの家庭の子は多く、自身がシングルマザーになっている生徒もいました。人生を投げ出しかけていた彼女は、熱心な教師たちの支えにより、子どもを育てながら卒業・就職します。学校で「前向きに生きる力」「誰かに頼る知恵」を得たといいます。

「学校に何ができるか」を考え、行動で示す教師たちの熱意に感動すると同時に、一人ひとりに寄り添う支援をめざしている私にとっても、学びとなりました。子どもの貧困問題については、親への支援に目が向きがちですが、子ども自身への支援についても拡充していきたいと思います。