性教育は人権教育!(アーニー出版視察報告)

近年、性教育の必要性が改めて問われています。それは主として女性が抱える様々な困難と性教育の欠如に密接な関係があることに、多くの人が気づき始めたからではないでしょうか。
また、十分な性教育を受けてこなかった世代が親となり、子どもにどう教えてよいのか戸惑う声も聞かれます。
どのような性教育が必要なのかを探求していたところ、7月の都議選に挑戦する世田谷・生活者ネットの関口江利子さんが企画されたワークショップを知り、同ネットの田中みちこ議員の紹介で、性教育のパイオニア、アーニー出版を視察しました。(4月20日)

アーニー出版は用賀駅から徒歩10分ほど、壁面全体に展開された性に関する教材、独特の温もり感のあるアーニーホールを併設しています。ここでは看護学校の生徒や親子を対象とした講座やワークショップ、様々なテーマのトークイベント等が開催されています。

まずは小学校3年生になりきって、身体の変化や妊娠、出産について学びました。事務局の平さんの語り口に引き込まれ、どんどん質問したくなります。「どうやって赤ちゃんはできるの?」もちろん性交についても仕組み(やり方ではありません)をきちんと伝えます。一方的に「教える」のではなく、子どもの「知りたい」「学び」につなげるのだと感じました。

その後、アーニー出版が制作した出産と中絶に関するDVDを2本続けて鑑賞した後、創設者の北沢杏子さんによる熱のある講義をお聞かせいただきました。
DVDでは、性教育バッシング(※のちに触れます)が起きる前、中学校で北沢さんが行う授業の様子がありました。「安全日はいつ?」「がまん汁(射精の前に分泌されるカウパー腺液)でも妊娠するの?」といった生徒からの率直な質問に対し、北沢さんは安全日はない、がまん汁でも妊娠する旨を丁寧に説明した上で、コンドーム着用の注意点も伝えていました。生徒はもちろん真剣です。

かつてこのような授業が展開されていたことに、私は衝撃を受けました。何故なら、今ではあり得ないからです。学習指導要領には、妊娠の経過については教えないという、いわゆる「歯止め規定」があります。「寝た子を起こすな」つまり、子どもに性に関心を持たせないためと言われています。
一方、北欧諸国では小学校1~3年生の教科書から「性交」も「避妊」も正しく教えています。この差は一体何でしょうか。

やはり性教育バッシングの話を避けて通るわけにはいきません。日野市民として、私はいつもこの話がでると胸が痛みます。2003年、市内の七生養護学校(当時)で行っていた性教育の授業が過激であると都議会議員が取り上げ非難したことがきっかけで、必要とされる性教育ができなくなってしまったのです。一方的かつ表層的な解釈による政治介入に対して、怒りを覚えるとともに、その後私たちが失ってきたものの大きさを考えると、本当に残念でなりません。

しかし近年の性教育の必要性への高まる声を受け、国もようやく少しづつ動き出しました。「生命(いのち)の安全教育」を今年度より段階的にはじめます。「子どもが性被害の被害者・加害者・傍観者とならない」ことを目的とした内容で一歩前進であると思いますが、断片的、限定的な性教育に私は違和感を拭えません。

必要なのは包括的な性教育であり、その学習を幼少期より子どもたちに保障していくことだと考えます。子どもたちは知る権利があり、それを保証するのは大人の義務です。包括的性教育は単に性の知識を得るだけではなく、性に関する自己決定権、自己肯定感、相手も自分も大切に、自分らしく生きることを学ぶまさに人権教育なのです。
ここが疎かにされてきたことが、日本のジェンダーギャップ指数の低迷(最新ランキングで156ケ国中120位)にもつながると考えます。北沢先生は多様な観点から、私たち議員にできること、寄せる期待を伝えてくださいました。

市内でも性教育について考える市民団体が活動しています。私は性教育を後退させる引き金となった事件があった日野から、誰もを豊かにする性教育を、広めて発信していきたいと願っています。
これまでも一般質問や予算要望を通して訴えてきましたが、これからも皆さんと共にすすめていきます。

オリジナルの人形教材も豊富です