学校給食残渣を堆肥へ!(八王子バイオマス・エコセンター視察)

生ごみ等食品残渣の約7割は再生利用されず、焼却場などで焼却処理されているのが現状です。水分を多く含む生ごみの焼却はCO2排出等の環境負荷と同時に、焼却炉への負荷も大きいものです。まずは減らしていくことですが、同時にできるだけ再生利用されることが求められます。
学校給食の残渣(ざんさ)等の食品廃棄物をリサイクル資源としてとらえ、発酵堆肥(たいひ)化処理に取り組んでいる八王子バイオマス・エコセンターを視察しました。(10月27日)
市内で家庭の生ごみのリサイクルに取り組んでいるひの・まちの生ごみを考える会(以下、まち生)さんよりお声がけいただき、感謝いたします。

◎臭気対策は
こちらの施設、実は2009年に開設した際、周辺住民より臭いの苦情があり、開設早々に施設を休止しています。日野市も過去に利用していましたが、施設休止に伴い利用を中止した経緯もあります。
その後約10年間、臭気対策の強化に取組み、3年前より再稼働しています。従来の活性炭による対策に加え、屋外に4種類のスクラバー(気体中に含まれる微粒子を洗浄液で捕集して除去する装置)を設置しています。ここまでの取組みは他には例がないそうで、今のところ臭いの苦情はないようです。
臭気規制値27に対して、24を自主規制値に設定、現在は20以下に収まっているといいます。数値だけみるとピンときませんが、濃度としては規制値の半分程度ということ、24時間モニタリングしながら、結果を公表しています。過去の失敗を二度と繰り返すまい、という強い決意を裏付ける実績だと感じました。

◎食品廃棄物のシェフ?
まち生の皆さんが普及に取り組んでいるダンボールコンポストを利用した経験のある方は実感があるかもしれませんが、発酵しにくいものがあったり、気温や水分、混ぜ方によって発酵の具合は異なりますよね。
食品廃棄物は季節によっても—例えば冬場はみかんの皮が多いなど—、搬入されたものによっても—この日は使われなかった大量のごぼう(写真右)など—様々な特徴があります。どんな風にミックスすればよく発酵するか、どんな状態を維持すればよいのか、また特徴のある臭気をどう除去できるか、まさに職人技の調整力を感じました。
こちらの施設では、新たに受け入れたものは一度発酵したものと木質チップを混ぜ合わせ、攪拌(かくはん)し、約2週間発酵させるというサイクルを数回繰り返し、さらに熟成させます。受け入れから約4~5ケ月の歳月と手間をかけて、堆肥に生まれ変わるのです。



◎回収の仕方も大事
食品廃棄物はそのままトラックで搬入されるものもあれば、保管のため小分けのビニールにいれたものもあります。このビニールは分別機で取り除かれ、焼却処分されますが、細かくなってしまったものは、どうしても取り除ききれません。バイオマス100%のビニールや防水加工していない紙袋だと、保管時に破けてしまうようです。できるだけそのままで回収できるのが望ましいですが、なかなか難しいですね。ここには課題を感じました。

分別されたビニール

◎つくられた堆肥「イズミちゃん」

学校給食残渣の排出元である小中学校には無償で提供し、環境学習や食育活動に活用されているとのことです。農作物を生産する農業者へは堆肥1㎥(約400kg)を2500円で提供しています。堆肥による土づくりを通じて化学肥料や農薬の軽減、有機栽培にもつながります。使用された農業者からは、「土がふかふかになった」と好評のようです。これが有機給食の実践につながれば!と思いました。

こちらは調整槽の堆肥

◎搬入距離に伴うCO2にも配慮を
説明してくださったセンター長の「実績を重ねて信頼を取り戻したい」という熱意を感じました。周辺住民の皆さんのご理解を得ながら、順調にすすむことを願うばかりです。学校給食はバランスがとれているので、その残渣もバランスがいいそうで、リサイクル資源として人気があるようです。こちらでは八王子市をはじめ、都内数カ所の自治体の学校給食残渣を受け入れています。
現在、日野市では大田区にあるバイオエナジーという施設に搬入しています。この施設では、メタン発酵システムにより発生するガスエネルギーにより発電をしています。それもよい取り組みだとは思いますが、より近隣の施設に搬入するほうが、移動に伴うCO2排出削減につながると考えます。9月議会の決算でも、八王子バイオマス・エコセンターを搬入先の候補としてまずは調査を求めたところです。

まだ食べられるのに捨てられてしまうフードロスの問題と合わせ、どうしても発生してしまう食品廃棄物の再生利用をどう進めていくか、循環型社会を形成する上で重要な視点です。
これからも皆さんと一緒に考え、取り組みをすすめていきたいと思います。

荒幡センター長(左より3番目)とまち生の皆さんと

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