データセンターって何?(おしゃべりカフェ報告)
毎回議会後に開催するおしゃべりカフェ。前回のおしゃべりカフェで参加者の関心が高かった「データセンター」について、まず知ることからはじめようと、日野市環境審議会の市民委員でもある伊瀬洋昭さんをお招きし、お話を伺いました。(1月19日@ひの市民活動支援センター 参加者25名)
データセンターとは
インターネット用のサーバーやデータ通信、固定・携帯・IP電話などの装置を設置・運用することに特化した建物の総称を指します。最近急速に拡大している生成AIは、データから学習したパターンや関係性を活用して生成するため、大量のデータを処理する必要があります。
このような背景から、首都圏を中心に国内はもとより、世界中で急速に需要が高まり、データセンターの建設がすすめられています。
電力の輸送コストよりも通信コストの方が低く抑えられることから、電力インフラの整ったデータセンターから通信ネットワークで需要地に伝送するほうが、企業にとってメリットとなります。個々で運用するよりも集約することで電力消費を抑えられることから、このような集合体とすることが総量的には電力消費を、ひいては脱炭素化に資すると国は説明しています。
とはいえ、個々のデータセンターは大量の電力を使用します。国はリスク回避の観点からも、電力を供給できるインフラが整ったところに分散して立地するよう推進しています。脱炭素化が社会共通の目標として掲げられている中、再生可能エネルギーを供給できる地域へ、補助金の仕組みで誘致しています。しかし建設や運用については、具体的な規制や義務化などの法整備が追い付いていないのが現状です。
日野市では
現在日野自動車工場跡地の一角とエプソン横の工場跡地に計画がありますが、後者は概要がまだ示されていないため、前者についてみていきます。手続きは日野市まちづくり条例に基づき行われます。
これまでに2回説明会が開催されています。1回目は、土地利用構想説明会(5月28日)、2回目は開発基本計画等説明会(10月2日)です。ちなみに説明会の開催告知は、現地にある看板を見るか、周辺住民へのお知らせ(範囲は建物の高さの2倍)となっています。(こちらも合わせてご参照ください)
説明会後は意見書を受付け、後日事業者より見解書が示されます。見解書は一定期間、都市計画課の窓口で縦覧できます。(そのお知らせは、市役所の玄関脇にある掲示板に張り出されるというもので、う~んなんともアナログな流れだなと感じてしまいます。)
1回目の説明会では、3棟の建物の最大高さが80mになることが示されましたが、2回目にはそれが72mと修正されています。それでもここはすぐ隣に住宅街(高さ制限10m)がありますから、圧迫感、日影、景観や風、騒音等の影響の観点から不安の声があがっています。この立地条件は、全国的にも例がないのではとのことです。
日野市まちづくり条例においては、様々な議論の末「マンションなどへの土地利用転換の場合にのみ25mの高さ制限をかける」となっています。ただし伊瀬さんは、データセンターは工場(製造業)ではなく、スペース貸しのハウジング型データセンター(不動産賃貸業/情報通信事業)なら土地利用転換にあたるのではないかと指摘をされていました。確かに「マンションなど」の「など」に該当するととらえることもできるのでは、と思いました。この事業形態については現在事業者からは「検討中」となっています。さらに事業者とテナントとの管理権限なども課題として指摘されました。
加えて、過去の事例から大型火災の危険性、また大切なデータを扱っていることからテロの標的になる危険性などについても懸念として示されました。
環境への影響
事業者は、使用電力量や排熱量の見立てなど含め、環境や人に影響を及ぼすことが懸念される情報の詳細は明らかに示していません。
説明会では「秘匿性」を理由に説明がない、あるいは「検討中」という回答が多く、参加者からは不満の声があがり、伊瀬さんも不誠実な対応だと感じられたそうです。確かにそれでは不安と推測が増す一方です。
例えば、昭島市などは日野市より規模が大きく、東京都の環境影響評価(環境アセスメント)の対象となっていることから、ある程度データが公表されています。それによると、昭島市全体の電力使用量の6倍、CO2排出量では4倍との試算があります。
日野市では環境影響評価対象とはなっていないことから(だから開示しなくていいということではないと考えますが)示されていませんが、伊瀬さんの試算によると、日野市全体のCO2排出量が、2025年度には3.3倍、2030年度には4.1倍になるのではとのことでした。これは何としても再生可能エネルギー100%にしてもらわねばなりません。加えて排熱量は2021年度の日野市全体の排熱量の約2倍になると試算しています。
これを冷却するにも水や電気が必要となるのですから、排熱はぜひ「利活用」してほしいものです。伊瀬さんは温水プールや農業ハウス、地域冷暖房利用などの例をあげられました。
この他にも、生物や植物また農作物、水、土壌等への影響など多角的な面からの検証が求められます。
これから取り組むべきこと
日野市には、まちづくりマスタープラン、まちづくり条例や環境基本条例があります。そこに書かれた理念を具現化する、住民との合意形成を図る仕組みもあります。市民まちづくり会議や都市計画審議会、環境審議会などの会議体があり、専門家や市民委員がいます。いまある仕組みの中でできることに取り組んでいくことが大切です。
現在のところ、その社会的合意形成が、情報の非開示、事業者の合意形成に対する姿勢によって阻まれていると伊瀬さんは指摘します。
企業はもちろん利益を追求するわけですが、それぞれ素晴らしい理念をかかげています。それをぜひひとつひとつの現場において、誠実に果たしてほしいと願いますし、市の調整力、市民力で建設的な対話による合意形成を目指していきたいと伊瀬さんはしめくくられました。
お話をきいて
私達の生活を支えるデジタルインフラとして、データセンター自体は今の時代必要とされるものだと認識しています。ただしその規模や生活や環境に与える影響に対する懸念は、ひとつづつクリアしていく必要があります。日野ネットは、基本的には、日野市を選んでくれた事業者とは良好なパートナーシップを築きあげていきたいと考えています。しかし情報がないままでは、懸念と不信感ばかりが膨らんでしまう、そのような事態は避けたいものです。調整会の実施など、建設的対話の場を求めます。
その後、1月22日に開催された市民まちづくり会議では、同じ工場跡地内(データセンター建設予定地隣)の敷地について、大規模土地取引行為の届け出に対する助言の審議がありました。委員からはデータセンターと合わせた累積的影響を鑑みる必要性を指摘する意見があり、少し引いた広い視点からも、並行してみていく必要があると感じました。
国は電力需要の高まりを受け、脱炭素電源として原発を最大限活用していく方針を打ち出していますが、それには反対です。脱炭素と脱原発は同時にすすめ、再生可能エネルギーの普及にこそ力をそそぎ、エネルギーの地産地消を後押しすべきと考えます。
開発による周辺環境整備などの良い点にも目を向け、「これなら」と市民も納得できる答えをつくっていくことです。いまある仕組みを使いこなすこと、伊瀬さんのような知識と情熱をもった市民委員の存在も、とても心強いと感じています。
今後も注視しながら、皆さんとともに考え、できることから取り組んでいきます。
【関連サイト】
デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合 (METI/経済産業省)
東京都の環境アセスメントについて|環境アセスメント|東京都環境局
【関連報告】