子どもの声を聴くということ(子どもオンブズパーソン講演会)
日野ネットの議員が初めて市議会で質問してから、28年後の今年「子どもオンブズパーソン」が日野市に誕生しました。時間はかかりましたが、心から嬉しく感じています。
子どもオンブズパーソンは、子どもがいじめや虐待など、権利を侵害されたときに、安心して相談や救済を求めることができる第三者機関です。坂井隆之さん(大学教授)と鳥生(とりゅう)尚美さん(弁護士)の2名が対応してくださいます。相談方法はこちらをご覧ください。
鳥生さんの講演会「子どもの声を聴くということ」があり、参加しました。(6月30日@みらいく)講演の概要や資料については、市のHP(こちら)をご参照ください。
子どもオンブズパーソンの役割
日野市に子ども条例が16年前からあることを、そして条例第16条にある「相談・救済」の「救済」にあたる体制が整ったことを鳥生さんは評価くださいました。
「相談」だけでは状況が改善しないこともあり、調査や調整、時には勧告が必要な場合もあります。その子にとっての解決とは何か、伴走してくれるのが「子どもオンブズパーソン」です。「子どもたちの声を代弁するスピーカー」と鳥生さんは説明されました。(日野市子どもオンブズパーソン条例もご参照ください。)
先進国での経験を日野市につなぐ
鳥生さんは孤独な子育て時代、研修で行ったノルウェーで、ジェンダー平等や子どもの権利の具現化が進んでいる状況を目の当たりにし、日本との違いにもはや「絶望」されたといいます。
そのノルウェーでは、「子どもオンブット」(オンブット=番犬)というそうです。圧倒的な信頼感があるからこそ、オンブットが出す意見は大きな影響力があるといいます。そのためには日野市においても「子どもオンブズパーソンってなに?だれ?」とならぬよう、これからどのように浸透させていくか、日頃から身近に感じてもらえるかが課題だと思いました。
また、鳥生さんは「ボーネフロッグ」(歩いてついていく)というノルウェー語を紹介してくれました。子どもについていって、ダメならまた考える。繰り返しながら、答えを一緒にみつけていく、そんなイメージです。決して子どもを引っ張っていくのではなく、あくまで子どもが主体です。
学校で性被害にあった子どもに対し、オンブットがどうしたいかいくつか選択肢を示すと、その子は「教育長に会う」を選び、会ってこう伝えたといいます。
「学校でイヤなことはイヤだと言っていいのだと教えてほしかった。他にも言えない子がいると思うから。」
それ以来、ノルウェーでは教えるようになったといいます。
悲しい事例ですが、意見が尊重され、仕組みが改善されていく—それがその子のエンパワメント、生きる力の獲得につながるはずです。子どもから問題を取り上げ、大人が解決するのとは違います。
まず、大人が子どもの権利を理解すること
鳥生さん曰く、人権とは安心・自由・自信が確保されていること。心を解きほぐし安心して話せる場があり、選択の自由が保障され、自身の存在(能力ではなく)への自信が持てることです。
でも子どもに「ジンケン」といっても伝わりませんよね。だからイヤだと感じるときにはイヤだと言っていい。そんな風に子どもたちに日頃から、年齢に応じてわかりやすく人権について伝えていく。学校教育においても、もっと重要視されていくべきだと日野ネットは考え、私も政策にかかげてきました。そのアンテナがなければ、子どもは自分のもつ権利が侵害されていると、気がつくことができません。
そして子どもの声を聴き、活かす環境を当たり前にしていくこと。それを通じ、子どもは個人として尊重されることを体得していきます。「子どもの声を聴くということは、子どもの言うなりになるということではない。聴く側にも人権がある。だから子どもとは主体と主体の関係性を紡ぐこと。大人は感受性だけでなく時間や意欲、労力がいる」という鳥生さんのお話にはハッとさせられました。
だからこそ、その前提として、まず大人が人権について理解を深めることが大切だ、という鳥生さんの指摘に深く共感します。自分も他人も大切にする姿を、日々子どもたちに見せているだろうか。おかしいと思う時に声をあげているだろうか。子どもの権利とは、子どものためだけのものではありません。大人が自分を振り返ることにつながります。
子どもには大人と同等に人権があり、その侵害に対し訴えることができる、一人の人間としての権利があるということを、大人が理解することです。
鳥生さんの講演は、初めから終わりまで、日野ネットの積年の願いを現実のものにし、さらに発展させてくれるに違いないと確信できて、感動しました。
ちなみに次の日(7月1日)は子ども条例の日で、条例第20条-22条にある「子ども条例委員会」設置後初めての会議が開催され、傍聴しました。こちらも条例にありながら設置されていなかったもので、日野ネットの悲願が叶いました。
活発な意見が交わされていましたが、その中に「日野市の子ども条例は大人が子どもを守るという視点が若干強いのでは、また権利と義務がセットになっているようで気になる」といった主旨の発言がありました。それは市民委員の素案に対し、議会からの意見で修正された部分かと思います。
当時は多くの大人が子どもに権利を与えるとわがままになると言って、なかなか進めない状況があったようで、本当に残念です。まさに、大人が子どもの権利について深く理解することがまず必要だということの表れだと感じました。
子どもオンブズパーソンの役割のひとつが、子どもの権利についての理解を広めることです。これからぜひ鳥生さん、坂井さんのご活躍に期待するとともに、私も普及に努め、子ども達、大人達にとってこの仕組みが活かされるよう取り組んでいきます。
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