ことわらない相談支援(座間市視察)
昨年NHKの番組(ETV特集「断らない」ある市役所の実践)を観て、強く印象に残った座間市の取り組み。担当者(座間市福祉部参事兼地域福祉課長 林星一さん)のお話を伺いに、生活者ネットの仲間と座間市役所を訪れました。(11月13日)
この取り組みの根拠となるのは、2017年に施行された生活困窮者自立支援法。法の対象となる「生活困窮者」とは「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」とあり、「基準」はありません。
自立相談支援事業の手引きには「包括的な視点を提供する仕組みづくりが、本制度である」とあります。その仕組みとして生まれた「断らない相談支援」の3本柱を伺いました。
1 市役所の機能を活かして連携して相談につなげる
自立支援制度ができた当初、林さんは庁内各課に概要を説明してまわったそうです。その成果あってか、ある日税の滞納相談窓口職員が、税を滞納している市民の方を林さんのところに連れてきました。後日その市民の方より「あの窓口を紹介してくれてありがとう」とお礼を言われたそうです。はじめてお礼を言われた、それがとてもうれしかったと、そのような成功体験は庁内で共有します。
さらに相談内容をシートで共有する、その活用方法を職員に研修し、オンラインコンテンツ化するなど地道な努力の積み重ねにより、「みんなが相談員」という意識が芽生え、職員がどんどん主体的に動くようになります。
広報担当職員も広報誌の表紙を工夫する。すると「広報見ました」と相談の電話がはいる。「届いた」という手ごたえや喜びが、さらに次の工夫につながるのだと思いました。
2 社会的孤立と包括的支援への対応
相談1件当たり、平均で3.8個の困りごとを抱えているといいます。それらは制度適用や公的機関との連携だけではとても対応できません。だからこそ、個の支援を通じて地域の方々と知り合い、社会資源の開拓につなげていく、この支援のネットワークこそが包括的支援を可能とする「チーム座間」です。
「包括的」という言葉については、地域の中で複雑化する課題群を丸ごと扱うという意志をあらわしたものであり、それこそが地方自治体の本務であるという話に、思わず膝を打ちました。
3 個別支援を通じた共同・連携から作られる包括的支援体制
就労支援や居住支援、ひきこもりサポートや家計改善、子どもの学習支援・生活支援など、相談者の抱えている課題、支援の実態を見えやすくするためにも「事業化」していきます。
国の法改正に先駆けて居住支援には力をいれてきた座間市ですが、以前は物件の貸し出しを「お願い」ベースでやっていたそうです。しかし、不動産事業者の立場も理解するようになる中で、NPO法人ワンエイドとの出会いもあり、事業化して予算をつけ、プラットフォームとして居住支援協議会をたちあげるに至ります。人権・男女共同参画課をはじめ、幅広い課が参加しているのも特徴です。
日野市では、福祉の総合相談窓口としてセーフティネットコールセンターが機能を担っています。居住支援協議会もすでにあります。日野市もがんばっていると思いますが、庁内連携や社会資源の開拓は、まだ課題があるように感じています。
座間市では、市役所の職員の方が、生き生きと働かれている印象を受けました。たまたまかもしれませんが、笑顔で声をかけてきてくれたりするのです。何気ないことですが、何気ないことが印象につながります。相談員としての自覚やプライド、これも研修の効果なのかもしれません。大切なことだと感じました。