もしも日野市がガザだったら(高橋真樹さんお話会)

ガザのニュースに接するたびに、言いようのない無力感とともに、たくさんの「なぜ」が心に浮かびます。その答えを求めて、市内で開催された高橋真樹さん(ノンフィクションライター)のお話会に参加しました。(10月4日)


高橋さんは大学時代、ピースボートでガザにホームステイした経験もあり、長年に渡りガザをみてきました。その高橋さんが、ガザについて一番わかりやすい本を書こうと、10代からでも読めるようにと今年の7月に出されたのが、「もしも君の町がガザだったら」(ポブラ社)という本です。お話会のあとこの本を読み、さらに理解を深めることができたので、皆さんにおすすめしたいです。

ガザは遠いし、宗教とか民族とか「複雑でよくわからない」そう思われるのも無理はありません。でも問題の根底にある本質を理解しておくことは、必要だと感じます。高橋さんは、身近な設定への置き換え話などを織り交ぜながら聞き手(あるいは読者)に問いかけながら、一緒に考えていきます。


パレスチナ問題の本質は、暴力の支配VS法の支配であり、「国際ルールを守れ!」という普遍的なものだと高橋さんは強調されます。暴力の支配とは、「占領」「民族浄化」「差別」、法の支配とは「人権」「国際人道法」などです。「誰がやっているか」ではなく「何をやっているか」で判断されるべきものです。
世界中が同じ物差し、つまり国際法をもとに行動できればよいのですが、それぞれの国の歴史からくる事情で、その対応がねじ曲がっているのが現状です。「(イスラエルの行為を)批判しにくい うしろめたさ」という言葉にはっとしました。「ホロコースト生還者のユダヤ人」と「イスラエルを建国したシオニスト」は分けて考える必要があると高橋さんは指摘します。宗教とか民族の問題として片づけていては、そこが見えてこないのだと気づきました。


どのような教育を受けてきたかも、大きく影響します。ホロコーストの歴史から学ぶべきは普遍的な人権であるはずなのに、イスラエルでは「ユダヤ人の身にくりかえされてはないらない」と教わるといいます。
元イスラエル兵のダニー・ネフセタイさんが「イスラエルでは高校に行くように軍に入るが、そこで『相手は人間じゃない』と刷り込まれた。でも日本にきて、みんな同じ人間なんだと気がついた。」と話されていたことを思い出しました。

では日本ではどうでしょうか。「戦争の惨禍を繰り返さない」という平和教育が実践されてきました。世界の恒久平和に向けて、もっとリーダーシップを発揮してほしいと願います。
一方で、参加者から「海外にルーツをもつ友人から、日本は戦争というとヒロシマ、ナガサキのことばかりでずるいと指摘された」という話もありました。被害、加害という立場が先ではなく、国際法に照らしてその行為はどうであったか。歴史というのはその観点で史実を冷静に検証していくべきではと、高橋さんの話から考えさせられました。
昨今、「日本人ファースト」という思想が広まりつつあることに危機感を覚えます。民族優位は差別を内包していること、差別が戦争を正当化してしまうことは歴史が証明しています。見えにくい暴力が、じわりじわりと広がっているように感じています。


高橋さんのことをはじめて知ったのは、電力自由化がはじまった際のお話し会です。何で作られた電気かを選ぶのと投票行動は相通じる、という話がとても印象に残っています。
その後も著書を読んだり、お話を伺う機会はありましたが、それらの根底にあるのは「世界の不正な仕組みを変える」ことだと今回のお話の最後にあり、点と点がつながったようで、私の中ですとんと腑に落ちるものがありました。
高橋さんご自身も、この現実を前に日々無力感にとらわれるそうです。でもこうして本を出され、講演をされています。それを広めていくことが、私にできることのひとつです。
これからも、パレスチナのためにというより私たちの未来のために、できることを続けていきます。いっしょに考え、行動につなげていきましょう。


★9月議会では、市民からの請願により、日野市議会として「ガザ地区における即時停戦および民間人保護を求める決議」を全議員の意志として示しました。

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※こちらの竹峰先生お勧めの絵本も高橋さんが書かれたものです