目指すのは “気軽に行ける学校“(はしうち教室視察)

まもなく二学期が始まります。この時期になると報道等で「子どもが学校に行きたがらない場合は、無理して行かせないで」と呼びかけられることも多くなりました。子ども達の声にならない叫びが、あちらこちらから聞こえてくるような感覚があります。

不登校児童・生徒数は増加の一途をたどり、全国で19万人を超えています。その子に応じた学びを続けられる環境を整えていくことは急務です。いわゆる「教育機会確保法」(2016年)により、学校復帰が前提であった不登校対策が転換され、不登校特例校の設置が国や自治体の努力義務となりました。(詳細はこちら
不登校特例校とは、不登校児童・生徒を対象に、実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施する学校のことで、独自の教育課程は文科省の認定が必要です。現在全国で21校(公立12 私立9)設置されています。(設置状況はこちら

先日、調布市立第七中学校不登校特例校分教室「はしうち教室」と、適応指導教室「太陽の子」を、調布・生活者ネットワーク木下やすこ市議のコーディネイトで、地域ネットの議員と共に視察しました。(8月9日)

ふたつは小学校跡地の同じ敷地内にあり、他には地域のスポーツセンターや地区センター、学童クラブなどもあります。

1階は学童クラブ、2階がはしうち教室

奥の建物が太陽の子

はしうち教室は将来的に学校への移行を見据えつつ、当分の間、分教室(本校から分離し、他の建物の一部を使用して設置する教室)として設置・運営される全国初の取組ゆえに、全国から視察が絶えないといいます。
「はしうち」とは、雛が卵の殻の内側を打ち破ってかえる際に、親鳥が外側から援護して殻を壊す行為のこと。子ども達の自立を応援したい、そんな願いが込められています。
現在10名の生徒が通っており(定員は45名)、受けたい授業を受けに来るポイント登校が多いようです。他の中学校からここに通うには、第七中学校への転校手続きをとります。
元宝ジェンヌが講師の表現の授業などもあり、卒業式では生徒達が自分の思いをスピーチで表現するそうで、毎年泣いてしまうと教育委員会の方はおっしゃっていました。

丁寧なご説明をいただきました

一方「太陽の子」は市内小学校に在籍する不登校の児童(4年生以上)が対象で、社会的自立に向けて個別課題学習やグループ活動を行う教室です。はしうち教室に通っている多くは、太陽の子に通っていた子ども達です。居心地のよさそうな多目的スペースが印象的でした。

ちなみに最近は子どもが学校に適応するために指導するというより、多様な子どもに適応していく支援の方向性から「適応指導教室」から「教育支援センター」へと名称も変容しつつあります。大切なのは中身ですが、名称も大切だと日野ネットは考えます。

調布市では、別室登校(学校内のクラス以外の教室に通う)や、今年度からは訪問支援もはじめています。別室登校では他の教室でクラスの授業を同時中継したり、訪問支援では日中は使用しない学童クラブなども利用するなどの工夫があり、学びを止めない、個別支援のあり方を模索している姿勢を感じました。

自宅でオンライン学習という選択肢についての質問に対しては、社会生活を送る素地をつくるという意味で、場の空気を感じ取れるコミュニケーション力をつけてほしい、そのためにはハイブリッド(リアルとオンライン)が望ましいと見解を示されました。その意味で、はしうち教室が目指すのは、行きたいときに行ける「気軽に行ける学校」なのかもしれないという言葉が印象に残りました。

 

教育の目的は、子ども達が自立して生きる力をつけることです。子どもが学校に行かなくなると、親子は悩み苦しみます。でも学校だけが学びの場ではない、学校に戻ることが目的ではなく、多様な選択肢があり、居場所があることで、絶望が希望に変わるはずです。道は一本じゃないし、どこかでつながっています。

日野市でも市立教育センター内に長期間の欠席状況にある児童・生徒の支援する「わかば教室」や、集団で学ぶことが苦手な生徒のために、いつでも登校できる登校支援教室も開設しています。しかしまだまだ、個々の状況に応じた支援が十分であるとはいえません。何をどうしていけばよいのか、自らの体験から相談に乗っている保護者の方にもおつなぎできますので、親子で抱え込まないで、よかったらご連絡ください。一緒に考えていきましょう。

生活者ネットワークの仲間とともに(前列左から4番目が木下やすこ市議)

 

【関連サイト】

不登校児童生徒への支援のあり方について(文部科学省通知)