当事者感覚をもつ市民を増やしていくために(全国政策研究集会2023 in東京に参加して)

毎年全国各地で開催している議員と市民向けの集会、今年は東京開催ということで初めて参加し、2日間に渡り大変有意義な時間を過ごすことができました。

20230818のサムネイル

概要はこちらをクリックしてください。

●消費者感覚から当事者感覚へ
基調講演(法政大学総長:廣瀬克哉さん)と三名の首長(杉並区長:岸本聡子さん・世田谷区長:保坂展人さん・米原市長:平尾道雄さん)によるシンポジウムを通じて印象に残ったのは、行政のサービスを消費するだけの意識から、そのまちに暮らす当事者として一緒にまちの課題や未来を考えていく市民をどう増やしていくかということです。普段から日野ネットも「市民自治」をモットーに活動していますが、これはまさに全国的な課題なのだと改めて強く認識しました。

そのために杉並区では、市民参加型予算を取り入れているといいます。市民の声を聞くだけではだめで、オーナーシップ(当事者)として関わる仕組みをつくることが大切です。
また行政だけでなく、市民もまた「タテ割り」という話もありました。だからこそくじ引き参加の手法が有効となります。ちなみに日野市でもいま開催している気候市民会議で、はじめてこの手法を取り入れました。共にYESを作っていく、合意形成のプロセスで市民としての誇りと責任を持つことで、自身もエンパワーされる。それを実感することが、はじめの一歩につながるという話に大いに共感しました。


●地方議会を討論の場に(分科会1)

日野市議会は、現在議会改革をすすめています。「議員間討議」の重要性を議論しているだけに、全国初の議会基本条例で有名な、北海道栗山町議会の話を聞けたのはとてもタイムリーでした。
元栗山町町議会事務局長の中尾修さんは、議会は「追認機関」でないことはもちろん、「監視機関」でもなく「意志決定機関」だといいます。最後に決めるのは議会、だからこそ機関としてその決定に責任を持つ、そのため徹底的に議員相互間で討論する、それが議会そのものなのだという話は非常に納得のいくものでした。
審議に数か月を要した議案もあったといいます。合意形成はプロセスであり、全会一致と必ずしもイコールではないこと、例え結果は同じでも納得感が違うということ、日野市議会ではこれからですが、多くの示唆を得ました。


●一人ひとりを大切にした子育て支援を(分科会4)

異次元の少子化対策が進められています。否定するものではありませんが、少子化は小母化。産みたい人が産める環境整備は必要ですが、産むことへの強要へもつながりかねない危惧もあります。
子育て支援で有名な千葉県流山市で、長年市民活動に取り組んできた青木八重子さん(NPO法人パートナーシップながれやま代表)は、市民活動が特別ではなくごく自然なことという空気があったといいます。都心へのアクセスがよく地価が安めな土地柄で人口が急増する中、子育て世代が周りにたくさんいて、助け助けられる関係性が育まれていったようです。それが当事者感覚の市民の育成につながったのだと感じました。
一人ひとりの子どもを大切にする子育て支援の充実こそが大切であり、それは行政だけではなし得ない、草の根の市民活動により支えられています。
市民活動のキーパーソンとなった青木さんも、はじめはなかなかママ友ができなかったといいます。ある日「うちに来ない?」と誘ってくれた女性のひと言でそれが大きく変わったというのですから、まちを変えるきっかけは、そんなひと言から始まるのかもしれないと思いました。

司会で参加しました

●現場に行かないと見えてこないもの
神宮外苑再開発フィールドワーク&神楽坂まち歩きのオプショナルツアーに参加しました。
美しいいちょう並木への影響や1000本近い樹木の伐採や移植がクローズアップされていますが、問題はそれだけではありません。神宮外苑地区の都市計画変更は、十分な周知も議論もないままに、2022年2月に東京都都市計画審議会で決まったといいます。現在はすでに第二球場の解体工事が着々と進められている状況です。
高層ビル3棟の建設を含む再開発は、このエリアの景観や環境を大きく変えてしまいます。景観や環境は一体誰のものなのか、この古くて新しい課題を突き付けられた思いです。

一方、神楽坂では味わいある街並みを守るべく住民が立ち上がり、地区の公式な合意形成組織を設立し、地区計画の策定に取り組みました。その背景には、自主規制では高層マンション建築を止めきれなかった苦い過去があったといいます。ルールを知ることで、何が違反かわかります。視点をもってまち歩きをすると、見えてくるものがあると体感したツアーでした。


●さて、これから

自治体の持続可能性は、そこに暮らす住民の地域へのコミットメントに支えられている、逆にそれがなければ衰退していくのだと思います。だからこそ、行政はその仕組みづくりを通して市民を全力で応援し、首長は組織のトップとしてリーダーシップを発揮していかねばならないと考えます。
日野市は地域懇談会の積み重ねもありますし、現在は北川原公園裁判をめぐる住民説明会が開催されており、これからは公共施設の再編をめぐり多くの議論の場が設けられるはずです。その根底にはやはり「自治基本条例」が必要だと改めて感じました。

この2日間の学びを、今後の活動に活かしていきます。

色々な地域の議員の方々と知り合いになれました!