景観保全施策の推進を(6月議会請願より)

市民より「日野市における景観保全施策の推進に関する請願」が提出されました。請願内容は下記の通りです。

  1. 景観が将来損なわれる可能性のある区域を景観保全地区として指定するなど、生活環境、自然景観、眺望景観に配慮した景観計画の策定を通じて、よりよい景観を保全すること

  2. 景観法に基づく景観行政団体に移行し、近隣自治体とも協力して景観の保全に努めること

  3. 景観計画に沿って開発等事業を誘導するため景観協定等、景観を保全する協定の締結を推進すること

  4. 景観計画の策定及び運用において住民の意見を反映する場を設けること

紹介議員として採択の立場で意見を述べましたが、残念ながら不採択となりました。良好な景観保全への思いは同じでも、そのアプローチをめぐって意見が分かれたものと受け止めています。論点を整理してご報告します。

〇景観法と景観行政団体

高度成長期に無秩序な開発が地域の景観を損ねる事態が相次いだことを背景に、2004年に景観法が制定されました。今年5月には「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」の一環で、都道府県の景観調整権限の強化など景観法も一部改正されています。
法の目的にはこうあります。

この法律は、我が国の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。

景観法に基づき、景観に関する規制を行う権限を持つ自治体が「景観行政団体」であり、法第7条に指定都市(人口50万人以上)、中核都市(人口20万人以上)、その他の区域にあっては都道府県、ただし、景観行政事務を処理する市町村の区域にあっては、当該市町村と定義されています。国土交通省によると、昨年度末の時点で全国の約45%にあたる789市区町村が景観行政団体となっています(こちらをご参照ください)。
日野市においても過去に、景観行政団体として景観計画を定め、景観条例を制定することが検討された時期もありました。しかし結果的に移行は見送られ、東京都が景観行政団体となっています。

〇景観に関して日野市が根拠とするもの

日野市には景観条例や景観計画はありませんが、以下の条例等にて景観に関する記述があります。

日野市まちづくりマスタープラン(59ページ)
景観法に基づく景観計画・景観条例のほか、まちづくり条例による地区まちづくり計画、地区計画等による景観形成など、複数の手法を用いて景観づくりを進めていきます。」※このほか景観という言葉は全体的に多用されている。

日野市まちづくり条例
景観という言葉はないが、前文全体で日野市の地域ごとの様々な表情をまちの豊かさとして次世代に継承していく旨が綴られている。

日野市環境基本条例 第4条(市の責務)
(5) 良好な景観及び歴史的文化的遺産の保全に関すること。

届出制度による景観形成|街並み景観|東京都都市整備局


〇景観行政団体移行に対する市の見解

委員からの質問に対する市側の答弁の論点を私なりにまとめました。
・過去に市民参画で景観まちづくりワークショップが10回以上開催され、景観条例の素案まで作成されたものの、個人(事業者)の自由な発想での土地活用が阻害される可能性、紛争の可能性、市の職員体制や財政面の負担増などの課題があり、見送られたものと認識している。
・都内で景観行政団体へ移行した他自治体の状況においても、同様の課題があるようだ。
・景観は数値化できない定性的なものであることから、現状の日野市まちづくり条例にある仕組み(調整会、事業者への指導、地区計画等)で一定の対応は可能。
・東京都の網掛けの中での現状の対応で問題はない。
個人の財産権と公共の福祉とのバランスを考えるうえで、景観行政団体への移行は慎重であるべき。

市の見解に賛同する委員(議員)は請願に対しては不採択であり、請願者および採択の立場の委員(議員)は、それより踏み込んだ約束事が必要ではないかというのが全体像だと受け止めています。

〇日野ネットの意見

この請願が付託されたのは「環境まちづくり委員会」でした。まさに環境とまちづくり、その全体を調和するのが景観行政ととらえています。まちづくり条例も環境基本条例も日野市が誇る素晴らしい制度です。だから今ある制度で十分だ、とする考えも理解します。確かに対応できることは多くあります。しかし、足りないから必要だというより、問題が生じた場合ではなく問題が起きないよう予防的役割、役割が異なるととらえています。
現在の仕組みでは、景観に「配慮しました」と言われればそれまでで、個別ごとの配慮だけでは地域全体の調和は守れない場合があります。
請願者も個人の財産権は尊重したうえで、過度な規制ではなくあくまで「調整」であるが、ルールは明確な方が事業者も対応しやすいはずだと訴えていましたが、景観行政は“調整”するための判断の根拠を明確にするものです。
あって当たり前だと思っていたものを失って、あるいは失いそうになってはじめてその価値に気づくということは多々あると思います。東京都で指定された以外の地域はどうなるのでしょう。

だからこそ、そうなる前に、普段から自分が住むまちを一人ひとりが見つめなおす、改めて残したい景観について考えるきっかけとし、それが自分たちのまちをどうしていきたいのか、景観はみんなの公共の財であるという意識を醸成していくことは、シビックプライドをはぐくむことにもつながると考えます。
そのためには、五感で感じる景観を都市計画のなかにどのように組み込んでいくのか、環境とまちづくりを包括する景観にかかる礎となる条例や計画は、いまある条例やマスタープランとともに、必要だと考えます。

私たちはこのような景観を大切にしています。だから一緒に大切にしてほしいというビジョンを面として明確にすることは、まちの魅力を高め、これからの日野市の発展にもつながり、選んでもらえるまちになると信じています。全体の利益との両立は可能です。

景観法制定の際には、景観行政団体をめざし取り組んでいた時期があったのですから、その続きをいま、法改正をひとつのタイミングに、その続きに着手すべきときであり、共に一歩を踏み出していただきたいと採択を求めました。

〇これからに向けて

今回の請願は残念ながら不採択となりましたが、あきらめることなく取り組んでいきたいと思っています。請願者がこの請願を出すきっかけともなった、日野台のデータセンター建設。工場地域にそのような高層な建物(当初の80mから現在63.5mへと変更)が建設されることは想定されていなかったわけですから、このままではまた同じことが繰り返される可能性があります。
何をどこまでどのように守っていくのか、これを機に皆さんと考えていきたいです。